七夕specialVol12決めた

ぞっとするような冷たさに身震いし、瞬間、凍ってしまいそうになる、あの視線。

くっきりとした二重を持つ大きな瞳なのに、穿うがったように細めて見ることしかできなくなっていた、あの瞳。

自分を慕おうとしてくれるそんな人をも、心を持たぬ無機質なモノとしてしか見ることができなくなっていた、チェヨンの瞳。

ウンスと出会う前の、その男の瞳と視線は、そうだった。

だが、今、その瞳、どうなっている。

あの瞳はーーーー。どうなった。

小刻みに躰を揺らす戦慄わななきを抑えきれず、ただ、ヨンクォンのするとおり、その男の胸に包まれるしかなくなっていたチェヨンの躰。

だが、今ようやく、初めて、すべての想いを断ち切り、自分の想いだけ、それ一つだけになり、鬼のような形相で向かってくる二人に正面から向き合い、自らもまた、凄まじい勢いで挑んでいこうとしている。

今のその男の、その瞳。

振り向きざまに、怒号で二人を吹き飛ばしたチェヨンの瞳からは、大粒の透明な雫が、大きすぎる涙ぼくろの堰をいとも軽と超えてあふれ出し、止めることなど、できなくなっていた。

歪む。みるみるうちに、ひどい顔になっていく。

なんとか冷静を装おうとしていたその頬は、これ以上無理なまでに歪み、その男自身がこぼしている雫でまみれ、見たことのないような顔をさせている。

そのようなこと、これまでのチェヨンでは、考えられないことだった。

自分の感情をこれほどまでに露わにし、隠そうとしない。

自分の想いをしまい込まず、むしろぶつけようとしている。

避けて丸まるのでなく、向きあって反る。

俺を見ろっ

まるで、そう言うかのように。

自分の雫を拭おうとしないその男。もはや、衣で拭ってどうにかなるような、そのような雫の量ではなかった。

そうなっていることに気づいていないのか。みるみるうちに、瞳の中で大きくなってくる男たちのことで、頭がいっぱいなのか。その男の視界は、もはや滲み切り、周りの様子が分からないまでになっているのに、それでもその男、チェヨンは、信念を持ち、突進していく。

まっすぐに。

正面突破。

我が道を行くのみ。

自分がそう決めた。

自分が。

決めた。

もう、後戻りしない。

そう、決めた。

チェヨンは、

決めた

というその言葉を、ただそれだけを、胸の中で繰り返し、スリバン街の滑ぬめる石畳の上を音もなくすっと走る。あの鬼剣も持たずに。自分の心。そのようになっている剣を打ち捨てて。

三人を見ていた周囲の者たちは、どうにかしなければ、なんとか止めなければと、固まり動かない躰に心の底からそう念じ、男たちの間に割って入るためのその一歩を、踏み出そうと必死になっている。

だが、なぜか、どの者たちの躰は、どうやっても動くことができない。まるで三人の男の気にがっちりと抑え込まれているかのように、動きたくとも動くことができない。こんなにも近くにいるのに、何もできず、ただ、瞳で追うことしかできない。

そのような場所を、動く一つの影。三人の男しか動けないはずのその場所を、すっと動く。スリバン街の屋根の上をmチェヨンと同じように移動する黒い影。

チュホンの嘶きが、戦の合図のように知らせる。

危ないっ

そう、チェヨンに叫んでる。

同時に、マンボ兄妹の悲鳴のような罵声が、スリバン街に響き渡った。

ヨンっ

それまでの静寂を切り裂くように、チュホンと同時に響いた音。

その音と同時に、どさっという音が、石畳の上を覆った。

自分の涙で見えなくなっていた周囲の様子。だが、その場所を勝手知ったるチェヨンは、動きのすべてを、自分の心で見ていた。

瞳で見えなくても、心がしっかりと見ている。

ヨンクォンの哀しく捨て身の動き、チャンビンの僅かにまだ遠慮しつつも向かう動き。テマン、マンボ兄妹、チュホン、女主人たちの動き。

そしてーー。もう一人。

チェヨンには分かっていた。徹底した安全が保たれいているはずのここに、一人。かなり腕の立つ間者が紛れ込んでいることを。最初から、分かっていた。今、その男が、チェヨンと同じように屋根の上を伝い走っていることも。すべて、知っていた。

弓矢を忍ばせている影。その腕が背中に回ろうとしている。

瞬時の動きも、心の目で見抜くチェヨンは、もっと早く始末しておけばよかったと、今さらながらに悔やんだ。自分の大事にかまけ、見くびっていた、と。大したことないと思い放置していたその影はことのほか俊敏で、想像以上に腕の立つ者だということを、今ごろになり、把握したのだ。

瞬間、上に心を向けたチェヨンが、すっと再び前を向く。

伸びる。

今まさに自分の襟首をつかもうとしている、ヨンクォンとチャンビンの腕が。4つの逞しい腕が今まさにチェヨンの襟首つかみ、

俺のものだっ

お前にわたさぬっ

そのように言おうと、そんな唇を作ったその時、

見えた。

チェヨンには。

ヨンクォンの、瞳を覆った透明な膜が。鬼の形相のはずのその瞳が、瞬間、あの優しい兄の色を見せ、だが、すぐにそれをなかったものに消し去ると、チェヨンの胸ぐらをチャンビンとともに鷲掴み、再び、自分の胸へ、ねじ伏せるように抱き込もうとしたーーー。が、それよりも僅かに先に、チェヨンが二人の躰を石畳へ叩きつけるようになぎ倒し、それまでの速さとは打って変わり、まるでその上の宙を緩やかに舞うかのように、ヨンクォンとチャンビンの躰に、覆いかぶさった。

どさっ、という、鈍く重すぎる音とともに。

屋根を這っていた影が、石畳のその道へと落下するのと、まるで同じように。

イムジャ

俺に力を

七夕special。

続けられるのか。

なぜこうなってしまっているのか、再び、問う。

筋は全く違えど

物語を書き始めた当初から

こう、しようと

思っていた。

シンイヨン。

5kissヨンではない、シンイヨン。

ヨン。

チェヨン

モドッテミタ

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